フィットの修理代がこんなに掛かった・・!CVTのショックで
車種:ホンダ / フィット
型式: DBA-GD3
年式: 平成18年5月
走行距離: 63000km

症状: CVTの車体ショック
(お客様の切なる訴えをその言葉通りでの表現)
「この車を新車で購入以来、変わらず思い悩んでいることを理解して欲しいのです。
主に中低速での走行中に体に感じる車体ショックがどうにも不愉快、気持ちが悪いのです。その症状が発生する条件を自分なりに整理し箇条書きにしてきたので見てください。」
1. エンジンを始動して5分位走行して、水温計がようやく上昇して、ファーストアイドル回転が解除されつつある、エンジン回転数が落ち着きだす暖機過程での減速時にコンと突き上げられる様な単発の車体ショックが発生。
2. エアコンがOFFでアクセルペダルを僅かに踏み込んで走行している状態から車速40Km/hを維持するためにアクセルペダルの微開閉を繰り返しているの、アクセルペダルを放した時に上記1.と同じ車体ショックが発生。
3. 渋滞がない夜更けなどの走行でアクセルの踏み込み量が一定状態を長く続けるクルージング走行からアクセルペダルを急に放した直後のエンジン回転数が下降する時に前後に揺すられる様な車体ショックが発生。
「私が説明できる発生状況は以上です。車体ショックの不快感を除けばこの車には問題は何もありません。燃費も加速も良いこの車が好きなのです。だからこの車とそれを取り巻く環境に対して、大袈裟かも知れませんが愛情が憎悪に変換する分水嶺にいる、これが今の私の心理状態です。ここまで我慢してきたのだから少々時間が掛かっても構いません。何とか良い方法を見い出してください。お願いします。」
この年式のホンダのCVTはマルチマチックと言う名称が付けられ、その一大特徴は他の国産メーカーとは異なり、発進クラッチがミッションの出力側(ドリブン側)に配置されていることである。つまりマルチマチックはエンジンとドライブプーリがクラッチを介することなく直結している。フォワード・リバースクラッチはドライブプーリの後方に配置されている。そこでエンジンのトルク変動によるねじり振動を抑えるため、二つのフライホイールを結合したデュアルマス・フライホイールを採用したが「車体ショック」防止に対する実効性が薄かったのは事実である。そしてやがて次モデルからのフィットもトルコン付CVTの道を選んで行った。
ただこの革新的とも言えるレイアウトのメリットは、エンジンとミッションの間にクラッチを配置する形式では、エンジンの駆動力とミッションのトルクの二つのパワー系統を持つことになり、両者が融合して連続的に作動可能な構成とはなり得なかったところを、変速トルクが直接クラッチに作用する動力系統の構築を狙いとして、停車中もプーリが変速回転待機の作用を可能とし、導く結果は適度なクリープ・発進時のレスポンスやエンジンブレーキの効力向上・坂道や車庫入れでの取り回しの良さ等を利点とするはずであった。しかしマルチマチックはそれだけ湿式多板クラッチにかかる負担が大きすぎ、長所と短所が表裏一体となり、逆転の発想がある部分あだ花となった。
掛かった修理代は・・・
70912円(税込)!
整備内容: オートマチックのトランスミッションの故障診断時には電装系を除くと、まず油圧測定を実施してミッション内部の状況を詳細までイメージし、機械的な不具合が発生していて仮に分解修理した場合には、事前のイメージと現実の整合性を確認することが鉄則である。
油圧測定とはミッションを車両から取り外す前の車載状態で、油圧計測が目的でミッションケースにねじ山加工が施されている油圧孔に数個の測定ゲージをつなぎ、レンジの変化と定速・加減速等走行条件の変化に対してミッション内部のフルードの圧力の量の変化とスピードが適正か否かを見極める手法である。ここで大事な事柄は、そこに現れる油圧の立ち上がりと立ち下りの変化点を望む姿と比較して良否を判断すること。車が動かない・変速しない等極端な状態、いわゆる故障している状態でない限り、修理書記載の正常データに対して明らかな違いを示すことはなく、よって油圧のボリュームだけを追いかけて変化点を凝視せずやり過ごす行為は、微妙な訴えとの整合性を見い出すこともやり過ごす行為となる。
油圧測定を実行し、この整備を成功させる上で一隅を照らしたのは、【フォワードクラッチの脈動が大きく立ち上がり方が急激である】特徴である。CVT内部の機能構造は、油圧制御機構と動力伝達機構に仕分けられる。油圧測定機構はバルブボディ言う部品名でオイルの通路の切り替えとタイミングを計る構造であり、動力伝達機構は発進・前進走行・後退の各レンジの役目を果たすために、バルブボディからの油圧を受け止めてクラッチを締結する湿式多板クラッチが肝となる部品である。
湿式多板クラッチ単品には、クラッチイニシャルクリアランスと言う、二枚のクラッチディスクと一枚のクラッチエンドプレートの隙間の百分の一ミリ単位の調整値である。クラッチドラムと言う丼鉢のような器の中に配置されているクラッチディスクに油圧が掛かりクラッチディスクが密着し、動力伝達ONとなる時のクラッチディスクの動き代のことである。基準値はフォワードクラッチに関しては、0.6~0.8mm。(クラッチは他にスタートクラッチとリバースクラッチがある。)
さてそのフォワードクラッチの現車実測値は、0.83mmの基準値超であった。量産車の誤差としては異常のカテゴリーには入らないが、モノサシを柔軟に変化させると、百分の三ミリメートルとは言えこの状況下でのこの数値は現車の走行性能に多大な影響力を持つ。クラッチイニシャルクリアランスのターゲットを0.65mmと定め、部品として0.1mm単位の厚さの違いで15種類設定されているクラッチエンドプレート
の中から必要な厚さのプレートを選択し、フォワードクラッチを狙った通りの0.65mmのクリアランスに組み付けた。つまり上下0.18mmクリアランスに変化をかけた訳である。
ミッションを組み付け、車載後のテスト走行で0.65mmのクラッチイニシャルクリアランスのイメージ通りの走りを実現することができ、当然車体ショックも解消しこの整備が完結した。
交換部品: フォワードクラッチディスク、フォワードクラッチプレート、クラッチエンドプレート、
ミッション・ガスケットキット、ミッションオイル
修理費用(工賃、部品代)の内訳:
部品代
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部品名 |
単価 |
個数 |
合計金額 |
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フォワードクラッチディスク |
1200円 |
2 |
2400円 |
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フォワードクラッチプレート |
490円 |
2 |
980円 |
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クラッチエンドプレート |
1080円 |
1 |
1080円 |
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ミッションオイル |
1200円 |
7リットル |
8400円 |
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部品油脂代合計 |
12860円 |
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交換工賃: 52800円
修理代合計: 70912円(税込)
タグ:CVT, GD3, フィット, フォワードクラッチディスク, ミッションオイル, 加速しない・変速がおかしい